家庭生活ベーシックコース
コール・テモテ
私は1年に80回ほど、日本各地の講演会やセミナーの講師として招かれますが、そのような場でよく聞かれる質問があります。それは「家族家庭にとって一番大切な事をひと言で教えていただけますか?」という質問です。家族家庭のテーマはあまりにも広く、あまりにも多くの大切な要因があるため、ひと言ではまとめられませんが、最もベーシックなものとして、次の5つのポイントを皆さんにご紹介してみたいと思います。
第1のポイントはもっとゆっくり生きるということです。
英語では”slow down”という言葉がありますが、私達の生活の流れがあまりにも速く、忙しすぎるため、家庭内のコミュニケーションをとる時間や、家族の絆を強めたりするための時間がありません。ある調査によりますと、日本人は世界で一番睡眠不足の国民であるそうです。更に男の人たちが子どもの世話にかける時間も平日は一日6分以下であるそうです。それほどにも私達の生活は忙しくなっているわけです。しかし、幸福な家庭生活を維持していくためにはどうしても時間が必要です。お父さん達は仕事をできるだけ早く終えて帰ってくること。子どもも友達との付き合いの時間にけじめをつけて帰ってくること。また家に居る時も、テレビ・ゲーム・インターネットなどのメディアや娯楽に使う時間を減らし、家族の時間をつくること。そうでなければ家族の間に隔たりができ、決して幸せな家族関係を作ることはできません。具体的には一週間に5回家族そろって一緒にゆっくり食事をとることを目標にしてみてはいかがでしょうか。
2番目のポイントは、意識的に神様を家庭に迎え入れることです。
私達が忙しい時一番最初にしめ出されるのは、家庭内における神様との関係です。もっと ゆっくり生活すれば家族で聖書を読み、賛美し、祈るなどの、神様を中心とした交わりを持つ時間がとれるようになります。そしてその中で、キリストらしく生きることを考え、また家族にとって大きな決断をしなければならない時に、神様の御心(みこころ)を求めることが自然になっていきます。聖書には「主が家(家庭)を建てるのでなければ、建てる者の働きはむなしい。」(詩編127:1)と言う言葉がありますが、神様の助けなしには健全な家庭造りは出来ません。家族にクリスチャンが数人いる家は、目標として、短かい時間であっても毎日みんなで祈り、聖書に触れること、そして毎週教会に行くことを目指しましょう。自分だけがクリスチャンと言う方は毎日家族全員の救いのために必ず祈りましょう。
3番目に、私達は家庭生活に計画性を持つ必要があります。
多くの家族はただ同じ屋根の下で、寝て食べてテレビを見たりして、なんとなく年月を過ごしています。しかしそのような成り行き任せの生活を続けて行くなら、本当の家庭生活の祝福は得られません。子育ての目標をたてたり、夫婦の間をより親密にするために話し合うこと、また家族にとって特別な日のお祝いの仕方を計画したり、お金の使い方の優先順位を共に話し合いながら考えたりすること、あるいは家族として神様や社会にどのように奉仕をしていくのかを考えたり、自分の家族にユニークな伝統や習慣を持つことを考えたりする中で家庭生活はより満たされ充実していきます。そのようなことを共に話し合うために月に一度(例えば日曜の夕食後にデザートを食べながら)30分くらいの家族会議をもってみたらいかがでしょうか。そうした場合には議論やケンカにならないように、何かを決定するのではなく、みんなの気持ちや夢や希望を分かち合う時とすることが鍵です。「今月一番良かったこと」、「今度の休みにみんなでやりたいこと」のような課題を投げかけてみて下さい。
4番目は、お互いの立場と必要を自覚することです。
家族の中には神様に定められた立場があります。夫は家の頭(かしら)であること。妻がその助け手になること。子どもは自分の親に従うこと。さらに子どもは親を、妻は夫を敬うこと、夫が妻を犠牲的に愛すること、など、立場に関係する配慮がとても大切です。また、親は大人ですから大人らしく振舞う必要があります。残念ながら私たちの世代の多くの親たちが、あまり健全な家庭に育っていないため、自制、我慢、誠実さなどを身に付けていません。例えばいらいらや怒りを子どもにぶつけるお母さん、仕事に没頭して家庭を顧みないお父さんたちも少なくありません。
また女性・男性・子どもが持つ独特の必要もあります。
一般的に女性は愛情の表現や家庭内のコミュニケーションを必要とし、感情的な絆を求めます。しかし男性は尊敬されることや共に共感できる体験などを必要とします。また性的な触れ合いも求める傾向があります。子どもたちも子どもなりに愛される必要、守られる必要、公平なしつけをされる必要、善悪の基準を覚える必要、一緒に遊んでもらう必要があります。そのようなお互いの立場を認めて、それらを尊重する家庭は家族の調和を生み出します。
5番目のポイントは、健全な問題の解決方法を身に付けることです。
私達が生きているこの時代は、みんなが忙しすぎるため、自己中心に育って来た人々が多いため、自分の生い立ちにも、メディアにも良い模範がなかったために、意見の違いや人格的な摩擦、あるいは生活の中で起きて来る誤解や衝突などを建設的に解決する方法を身に付けている人はあまりいません。そして、問題そのものよりもこれがお互いに傷付けたり、隔たりを起こしたりする原因となるのです。ここで問題解決のテクニックを説明するスペースはありませんが、二つだけ上げますと、まずはどんなに激しい衝突になっても肉体的な暴力や言葉の暴力は絶対してはならないこと、そして相手の立場を完全に理解する目標で話をよく聞くということから始める必要があります。
個人や家族が孤立してしまう傾向がみられる現代、他の人々と付き合うことは面倒、煩わしい、プレッシャーを感じることはないでしょうか。しかし教会での交わりは特に、そして親族との関係や近所付き合いにおいても、その関係を深めていこうとする努力の中に、どの家族も必要としているサポートや励ましやアドバイス、時には忠告も与えられていきます。そういう横のつながりを持つことも、家族が何かの危機に直面した時に、計り知れない価値を持つ要因になります。
以上のことは常識のようですが、実は多くの方々は意識的に取り組んだことがないのです。そうしたからといって目先の家庭問題がすぐに解決するわけではありませんが、一年、三年、五年がたつうちにきっと良い方へと変化が見られるに違いありません。失望せずにそのゴールに向かって一歩一歩進み
ましょう。