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ファミリー 

ラニー・ラッカー夫妻 結婚と子育てを語る
(2000年6月発行の「ファミリー・フォーカス」15号に掲載された記事のアンコールです) 
  [マガジン PDFで読む No1 No2]

●ラッカー・ゴスペル・ミニストリーを主宰し、全国でゴスペル・クワイヤーの指導などで活躍中のラニー・ラッカーさん。「家庭を大切にしたいから」という理由で、新たなコンサートの依頼を断わることも。日本人の奥様との出会いから、日本で家庭を築く喜びや苦労など、お話を伺いに、編集者が調布市のご自宅に訪ねました。

陽子: 私たちが知り合ったのは一九七八年、私が19歳で彼が26だったかな。ちょうど、ディスコブームの真っ最中で、その時主人は3ヵ月くらいの短期間の日本滞在で、大阪でミュージシャンをしていました。
初めて会った場所はディスコ。私は、踊りに行った客で、彼はステージの上でピアノを弾いてたんです。そこで知り合って交際が始まりました。それから数年間つきあった後、私の親に「結婚したい」って言ったら「彼を強制送還する」とか、犯罪でも犯したかのように言い出して、もうダメでしたよね。男の兄弟たちのあとで初めて生まれた娘を取られた、という気持ちだったんでしょう。
最後には、「勝手にしろ」と電話を一方的に切られたから、私も21歳で若かったので、「じゃあ、結婚していいんだ」と思って「親とラニーと、どっちかを選ばなければならないんなら、彼を選ぼう」と決心しました。
私は、まだその時クリスチャンではなくて、主人も結婚した時は、信仰から離れていました。親はもちろん、兄弟も親戚も来てくれませんから、式は友達だけを集めて挙げました。親は私たちが結婚式を挙げていることすら、知らなかったんですよ。
後日、父が戸籍抄本を取る必要があって役所へ行ったら、[陽子は、アメリカ人ロナルド・ラッカーと入籍]とあったのを見て逆上しまして、それから、だいぶもめました。「外国人」というそれだけで、反対でした。やっぱり、親はショックだったんでしょうね。でも、今はすっごく仲がいいですよ。父も、「ラニーと結婚して、よかったね」って、よく言ってくれますよ。母も「忙しくしてるようだから、栄養に気をつけてあげなさいよ」って言いますね。長女のエツコが生まれて、写真を送ってやってから、だんだん両親の心が変えられていったんです。

ラニー: 血のつながりのある孫が生まれたので、無視できなかったんでしょう。長女のエツコは、陽子の母の名前です。ミドルネームは、私の母の「オーリーン」をもらいました。

ラニー: 結婚した時から、僕は日本の文化に興味がたくさんありました。日本語にも興味があったので、自分を日本に合わせようとしました。空手道場にも入りましたし、日本人以上に、日本人をやっていこうとしたところがありました。日本食も食べようとしました。納豆は食べないけど(笑)。
合わないところは、彼女がゆるしてくれています。彼女は彼女で、アメリカ文化に興味があったから、考えが合わなくてもなんとかやっていこう、と思ったんです。
家族は、なんでもいいから一緒にするのが大切ね。私たちは夕食を早く食べたあと、近所をみんなで散歩します。どんな夫婦でも、ギブアップしたい時が来るんですよ。私たちは、家族で祈ったりとか、聖書の学びをしたりとかしているのは、大きいね。
日本のお父さんは、仕事ばっかりでしょ。家族と接する時間が少ないでしょ。それは、そもそも、お母さんたちが、子どもに何でもしてあげるのが悪いよ。男は小さい時から「僕は、家の中で何もしなくてもいい人なんだ」と思ってしまう。「ごみを出さなくてもいい、皿を洗わなくてもいい、自分の部屋を掃除しなくてもいい」大人になって、それが当たり前になっている。自分の家でも、お父さんが、何もしてないじゃない。お母さんは、もっと手を出したいのを我慢して、子どもに仕事をさせなきゃいけない。ゴミ出しでもトイレの掃除でも、子どもにさせなきゃいけない。

陽子: 私は日本人だから少し甘やかすところがあって、そこが彼とバランスの取れている部分ですね。ラニーが「お布団しまいなさい」と命令すると、子どもたちはさっと行って、しまいますよ。

ラニー: お父さんは、娘に対しても責任があります。アメリカでは「娘は父親のような男性と結婚する」と、よく言います。小さい時から、ずっとお父さんを見ているから、もし何も家ではしないお父さんなら、そういう男性と結婚してしまうと思う。うちでは、お父さんが掃除しているのを見るのは、当たり前です。5人全員でわが家を作っているんです。おかあさんばっかりが仕事をするんでなく、僕もやれば、子どもたちもする。

陽子: 主人は家の中では、いつもどこかで動いています。お風呂掃除をしてたり、朝起きたらパパが洗濯機回してるのは日常のことです。主人は、何日間か外に出かけていることが多いですけど、子どもたちはパパの帰ってくる日に、玄関の所にパパへの手紙を置いてくれるんです。「パパ、お仕事お疲れ様でした」って。
  それから私に対しても「ママ、朝お皿洗いできなくてごめんね、夜やっといたよ」とか、それぞれ三人がメッセージを書いてくれていて、私は、それをみんなとってあります。親子でけんかになることもありますが、長女は「ごめんなさい」って手紙で書いててくれたりします。私が外に行かなくちゃならない時には、ラニーが子供たちにご飯を作ってくれて、子どもから「パパのラザーニャはおいしいから、ママ、絶対食べて」って言われます。

ラニー: 僕は子どもが好き。結婚する前から子どもはたくさん欲しいって思ってた。マイケル・ジャクソンの家族は、みんな音楽ができるでしょ。そういう家族を作りたかった。いろんな本も読みました。今も勉強してます。ドブソン博士の放送を聞いたり、本を読んだりして、すごく参考になりましたよ。自分で「ハウ・ツーお父さん」的な本を書いたこともある。まだ出版されてないけど。とにかく僕は、家の中のペースメーカーになるのが好きなんです。

陽子: 私から見て、ラニーは、隊長みたいな感じがする。「右向け、右」って言うと、私と子どもたちが右を向く。パパが正しい、と認めているから。成長の中で反抗期はありますけど、子どもたちは全員救われて、聖書を読んでいるし、さっき出てきた玄関に置かれているメモの中にも「いつもお祈りありがとう」っていうのがあって、祈られていることをすごく分かっているし、誰かに「お父さんをどう思う?」って聞かれると、三人とも「尊敬してる!」って答えてます。
一年間の仕事のスケジュールを決めるのにも、まず第一に、神さまがこの家族を下さったというのが、祝福の絶対の基礎、土台だということをいつも忘れないようにしてます。外からいろいろなお招きをいただくと、それを忘れそうになって、片っ端から引き受けそうになって、嵐が吹き込んだみたいになってしまいます。
ある時、二人が同時に家を空けていたことがあったんですが、二人が別々に神様からふっと肩を叩かれて、「どっちか一人が家にいよう」と話し合ったんです。

ラニー: 家族が与えられて、子どもたちが育つためにいい環境を与えたいと思った時、自分が子どもの時に信じていた神さまに戻るしかないと思ったんです。健康が与えられ、仕事が与えられ、家族が与えられた時、僕にとっては教会に戻ることがすごく自然でした。
銀座などでお金のためだけに働いていた時、すごく空しくて、妻や子どもを見ると、やっぱり教会に戻らなきゃと思って。さっきも話したけど、夕食を早めに食べて、近所を家族で散歩していた時に、歩いて行ける距離に調布南教会があったんです。そこで陽子がクリスチャンになって、後から子どもたち三人も神さまを信じました。これは今から考えても「大正解」と思う。 
なぜなら十七歳の長女が、現在は世の中の影響を強く受けてるけど、キリスト教の土台が出来ているから、自分から聖書を開くし、神様からそんなに遠くには離れない。流行に流されても、箴言22章6節にあるように「若者をその行く道に、ふさわしく教育せよ。そうすれば、年老いてもそれから離れない」と思う。

陽子: 子どもたちにとっては、教会に行くのが自然ですよね。

ラニー: 父親は家の「祭司」だと思う。

陽子: ラニーは、神さまに追い込まれちゃったのね。銀座で働いていた時は、朝の3時とか4時に帰ってくるので、子どもの顔を見ないわけですよね。そうすると疲れて来ますよ。その頃に主人は、神さまに祈って「この仕事はやりたくない、あなたに仕えるから、あなたは僕の家族の面倒を見て下さい」と言ったんです。それから神さまが夜の仕事、水商売関係の仕事を全部閉ざされたんです。代わりに、調布南教会のミュージック・ディレクターとして二年間仕えることができました。そこで、どうやってクワイヤーを指導するか、ということをラニーは神さまから訓練されたんです。それから、神さまに「教会を出て、全国でわたしのことを伝えなさい」という言葉をいただいたんです。

ラニー: 教会から給料をもらっていたわけじゃなくて、まだ一般社会でも仕事をしていました。音楽教室を開いたりして、暮らしを立てていたんです。

陽子: 父親が変わってくると、子どもたちも変わって来ますよね。長女は、妹弟よりも先に世の中を体験しします。日本語は話せても外見は日本人じゃないから、いろいろな思いを持ちますが、聖書が基礎に入っているから、それがない子どもとはやはり違います。

 ●親は子どもの賜物を引き出して
ラニー: お父さんは毎日子どもを見ていられないから、お母さんの役割が大事だね。毎日子どもと一緒に聖書を読んだりしないとだめ。子どもたちの才能を伸ばすことについては、ずっと考えています。生まれた時から、誰でも賜物があるはずだよ。ワールドクラスの賜物があるかも知れない。親がどうやって、それを引き出すかです。
  跳んだりはねたりする子を見てイライラする親がいるでしょうが、もしかしたらスポーツ選手になるかも知れないじゃない。「やめなさい、座りなさい」と言ったんでは、賜物に水をさすことになる。親は子どもに自分の賜物を発揮するチャンスをあげることが大切じゃないかと思う。ある子は勉強がよくできる、優れている。書くのが好きな子、料理ができる子もいるんじゃないかな。

陽子: そういう環境を作っていかなくちゃいけないわね。

ラニー: 日本では、自分の家族の良いことを人に言うのは少ないみたいだね。

陽子: どうしても自慢しているようにとられちゃうのよね。学校のPTAに行ってもそうですよ。自分の子の良いところは、ひとつも言わない。親がすっごく否定的ですよ。私一人くらいですよ、「この一学期で、こういうことができるようになった」なんて言うと、みんなが「うぉーっ!」って驚いたり。(笑い)

ラニー: 言いにくいでしょ。

陽子: 言いにくい。でも私は、自分が二つの文化を持っていて、半分半分なんだと自分で割り切って居直ってますね。

ラニー: 息子はジョン・E・ラッカーと言います。ミドルネームのEは、本当はエドワードなんですが、僕はわざと彼に聞くんです。「キミの名前のEは、何の意味なの?」すると、息子は「エドワードだよ」と答えます。だから私、言うんです。「いいや、エクセレント(優秀)のEだよ」ってね(笑い)。すると、ジョンの顔が変わって来ますよ。

陽子: 否定的にでなはくて、肯定的に考えなくちゃね。何か失敗をしても、「あぁ、あの時パパがああやって励ましてくれた、またやればできるんだ、やってみよう」と考えて欲しいですね。

ラニー: 子どもを育てるのは、人間を作る仕事だから、二十歳ぐらいになったら元気に世の中に出て行く子を作るのが、親の仕事ですね。

  ●家族みんな、音楽好き
陽子: うちでは家族がみんなで音楽をできるのが、大きな絆ですよね。子どもたちも賛美することが大好きで、練習は厳しいですけど、別にミュージシャンにしようと言うわけではなく、神様を賛美するためなんです。

ラニー: 音楽じゃなくてもいいんです。近くの佐藤さんという家では、家族でよくゲームをしています。何であっても、親が意識してやっていかないとダメですね。

陽子: ビデオを一緒に見ることでもいいし。日本人の家族を見ていて、運動会にお父さんたちが来るのは、いいなあと思いますね。お弁当を一緒に食べたりとか、懸命に応援したりとか、日本の運動会は家族の集まる場所になっているなと思います。

ラニ?: バブルがはじけてから、会社でそんなに遅くまで働かなくてもよくなったお父さんは、家族ともっと接したいと思っています。でも、どうやったらいいか分からない。
アメリカにはそのための本があって、僕はたくさん持ってますけど、日本にはそういう本がないね。翻訳したものもいいけど、アメリカ人にはアメリカの考え方があるし、日本には日本人独特の接し方があるでしょう。例えば、お風呂に子どもと一緒に入るとか。そういうことは、ドブソン博士は書けないね(笑)。僕の友達が家に帰って来ても、家族と話が合わなくて、御飯を食べ終わったら一人でずっとテレビを見てる。子ども三人とお母さんは他のところで別の事を賑やかにしているけど、家族と話ができないのは、情けないなぁと思う。
夫婦でも、意見が合わないことはありますが、クリスチャンならば一緒に聖書を読んで祈ることが出来ます。人間的には赦せない時にも、聖書には「七回の七十倍まで赦しなさい」と書いてあります。牧師先生に相談することも出来ます。やっぱり忍耐が必要ですよ。若い時は相手に合わせられるけど、年をとってくると趣味も違い、考え方も違い、自分勝手にやっていきたくなるんじゃないかな。

陽子: 具体的には主人が、何か私に対して言いたいことがある時は、態度に出てきますね。逆の場合も同じですね。ずっと長く一緒にいるから、相手がおかしいな、とすぐに思いますよね。必ず。「なんで口きかないの」とか、「なんでそういう態度を取るの」とか相手に聞いて、そこから対話が始まります。「実は、君に対してこう思っている」などと二人で話しを始めます。感情に走らないように、手紙を交わすことも多いです。

ラニー: 読んですぐ返さなくてもいいから。

陽子: 話だと、売り言葉に買い言葉で、思っていないことも言ってしまいますよね。傷つけられたら、傷つけ返そうってなると、「イエス様、ちょっとそっちに行ってて下さい」っていうくらいに、感情に走ってしまいますけど、手紙に書くと、相手とその場で面と向かっていないから冷静に書けるし、それから何度も読み直すことによって気持ちが落ち着くんですね。
  醜いですよ、口で喧嘩をするっていうのは。ポイントから外れてしまう。何年も前の事が出て来たりとか、全然話しが噛み合わない。今でも主人の言っていることにいい加減に返事をしてしまって、彼に「ちゃんと分かってるの? 今僕が何を言ったか自分で繰り替えしてみて」って言われて初めて、聞き流していた自分に気付いたりとか、ありますよね。

ラニー: 学校でも、生徒は先生の言うことを聞いてないよ。友達同士でも夫婦の仲でも、聞くことがどれくらい大切か。人が話をしている時も、それが終わったら自分が次に何を話そうかと考えているでしょ(笑い)。牧師先生が祈っている時でも「今日、教会が終わったら何しようかな」って考えてる。「お昼には、どこどこでとんかつ食べようかな」(笑い)、なんてとんでもないこと考えてるんです。アメリカのある有名な人が、「コミュニケーションには、二人が必要だ、話す人と、聞く人だ」と書いています。日本人、アメリカ人に関係なく、誰でも、もっと人の話の聞き方を勉強することが必要ですね。

●テンポよく進む会話が、耳に快感です。やはり、音楽一家だからか。2007年早春、いのちのことば社から、ラニーさん初のソロCDを発売予定。曲目は、聖歌中心とのこと。お楽しみに!

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