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結婚 
ドブソン博士
  ドブソン博士の一問一答
Q.436

暴力を奮う夫の奥さんがクリスチャンである場合は、夫を離婚するべきでしょうか。


A.

いいえ。奥さんはまず別居をして、ご主人に自分の虐待の事実を認め、それを解決させるように努力するべきです。祈りと強い決心によって、彼女は結婚生活を維持し、ご主人が暴力的な傾向を克服できるような手助けができるやも知れません。もちろん、「言うは易く」で、願った通りになる保証はないのですが、それでも努力してみるべきだと私は思います。

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Q.437

その奥さんは、ご主人の問題をどうやって解決したらいいのでしょう


A.

家庭内暴力のご主人に対しては、「タフラブ(厳しい愛)」という原則が、最善です。
まずは、物事がスムーズに行っている間は、行動は変わらないことを認めることです。もし変わるとするなら、それは、危機が起きる時です。それで、危機をつくり出し、それを上手に扱わなければなりません。

別居して、奥さんに戻る気がないことを明らかにしたら、ボールはご主人の側に渡されたことになります。何の応答もないなら、奥さんは動きません。1年かかろうが5年かかろうがいいのです。ご主人が奥さんに帰ってほしくなり、自分の問題を認め自分から行動を起こさなければなりません。

ご主人が、自分に虐待の行動パターンがあることを認め、治療を受けることを受け入れたら交渉が始められます。奥さんが選んだクリスチャンのカウンセラーと、集中的なカウンセリングをする約束をします。奥さんが帰宅しても安全であり彼は回復途上にあると、カウンセラーが結論しない限り、奥さんは帰宅してはなりません。元に戻るのもゆっくりとです。
時間のかかる作業ですが、やってみる価値はあると思います。

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Q.438

暴力を受けている女性は、みなそういうことをするべきですか。主人は、大げんかしたとき私を1回ぶっただけです。私も別居すべきでしょうか。


A.

あなたの場合は、また別の範疇に入るでしょう。男は、かんしゃくを破裂させてうっかり手を出し、すぐに後悔してもう2度としないということがあります。それは、暴力がくり返される病的な症状とはちがいます。お話の例外的な情況をどう扱うかは、奥さんが自分で決めるべきですが、お2人で真剣に話し合う機会にすることをお勧めします。1度打たれたなら2度目もあるかもしれません。同じことが再びないように、基本原則を決めておくべきです。

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Q.440

私は、今の結婚生活に不満です。3人の子どものことがなければ離婚したいくらいです。離婚が子どもに与える影響についての調査は何かありますか。


A.

子どもの情緒的な発達は、ふた親との間に暖かく愛情に満ち、励ましのある継続的なやり取りがあることに正比例することが立証されています。母もしくは父とのこの重要な関わりを阻害するものはなんであれ、子どもにとって後々まで良くない影響が残ることがあるのです。

ある調査によると、離婚家庭の子どもの90%が、両親が別れた時に深い悲しみや理屈に合わない恐れを含む、激しいショックに襲われました。50%は、両親に拒まれ、見捨てられたと感じました。実に、父親の半数は、離婚後3年間に1度も子どもに会いに来ませんでした。子どもの3分の1は、残った親にも捨てられはしないかと恐れ、66%の子どもたちについては、いなくなった親に会いたいと言う願望は、調査員達が「圧倒されるほど」と表現したほど強烈なものでした。

意義深いことに、子どもの37%は、離婚後1年半よりも5年後のほうがより不幸で苦痛が大きいと言いました。言い換えると、時間が心の傷を癒すことはなかったのです。
これこそ、離婚の真実です。テレビなどで夫婦間の不貞や欺きがまるでゲームでもあるように描かれているのを見ると、私は義憤を感じ上のような統計を思わざるを得ません。

結論として、あなたが離婚を求めるかどうか考える際に、子どもたちの幸せを考慮するのは正しいことです。あなたにとっては、結婚生活が空しく思われるようですが、お話を伺う限り、もう少し辛抱された方がお子さん方のためには幸せだと思われます。

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Q.451

今日の離婚率の高さの原因となるものをいくつかあげていただけますか?


A.

おそらくそのテーマで本をいくら書いても充分には言い尽くせないでしょう。最悪の場合、以下にあげたもののうちの一つでも夫婦関係を葬ってしまう危険をはらんでいます。

 1. 無理な計画と疲労 
これには注意が必要です。仕事についたばかりか、学校に入学したばかりの若いカップルにとっては油断がなりません。何かの勉強とフルタイムの仕事と、出産と育児と、家の修繕と新たなビジネスとを一度にやろうとしてはいけません。

「冗談でしょう」と思われるでしょうが、多くの新婚夫婦は本当にそのような生活をし始め、結婚生活が破綻してから、「どこがいけなかったのか」と頭をひねるのです。

無理もありません。二人が顔を合わせる時は、いつも疲れ切っているのです。常に新鮮な愛情を感じたいなら、二人だけの時間をとる努力が必要です。

 2. クレジット・カードの濫用、そしてお金の使い方についての不一致
基本的には現金でしか払わないことです。家や車のローンに追われて、リクリエーションのための費用がなくならないように注意してください。資金の運用には、ソロモンの知恵が必要です。

 3. わがまま
世の中の人には、ふた種類あります。与える人と受ける人です。与える人同士が結婚したら素晴しいですね。与える人と受ける人が結婚したら、摩擦は避けられません。受ける人同士が結婚したら、何週間もしないうちに傷つけあうでしょう。わがままは、短期間に夫婦関係を破壊します。

 4.不健全な親戚づきあい
夫か妻が、精神的に親から完全に独立していない場合は、近くに住まないほうがいいでしょう。子どもを手放すのに困難をおぼえる両親もいます。近くに住むことは問題を招きます。

 5. 非現実的な期待
結婚生活とはバラに囲まれた家に住み、サクラソウの歩道を歩き、絶え間のない喜びの連続であるかのように想像している新婚カップルがいます。不完全な人間が二人寄り添っていて、そんな期待通りになるわけがありません。

カウンセラーの故ジーン・ラッシュ女史によれば、このような幻想は特にアメリカ人女性にありがちとのことです。女性は、とうてい夫が答えられないほどの期待を抱くものです。私もそう思います。その期待が裏切られたとき、結婚生活は地雷の上を歩くほど危険なものとなります。

 6. スペース・インベーダー
これは、火星から来たE.T.のことではなく、自分の伴侶に息抜きをする空間さえ許さず、精神的に相手を窒息させて、嫌悪感を抱かせるような人のことを面白おかしく言ったことばです。その一つの兆候は「ねたみ」です。もう一つは低いセルフイメージであり、自分に不安を感じる人は伴侶をいわばオリに閉じ込めるようなことをします。これでは息がつまります。
愛情は自由なものですから、相手を信頼することが大切です。

 7. 性的なフラストレーションと、それに伴う浮気
この二つは、恐ろしい取り合わせです。

 8. ビジネスの失敗
仕事上の失敗は、ことに男にはこたえます。経済的な悩みが、時には伴りょへの怒りを引き起こします。

 9. 商売の成功
ビジネスのはでな成功は、失敗と同じくらい危険です。ソロモン王は「貧しさも富も私に与えず、ただ、私に定められた分の食物で私を養ってください」(箴言30章8節)と書きました。
エドワード・フィツジェラルドは言いました。

「記録専門の天使がしたためる最も悲しいページのひとつは、成功したために身を持ち崩した人達の記録だ」
全くそのとおりです。

 10. 早婚
14歳から17歳の間に結婚する女性たちの離婚率は、18歳もしくは19歳で嫁ぐ人より倍以上も高くなります。18歳もしくは19歳で結婚する人達の離婚率はは20代で結婚する人達の1.5倍です。思春期の悩みと早婚のストレスは折り合いが悪いのです。思春期の悩みが終わってから結婚に取り組んでも遅くはありません。

 11. アルコールと薬物の乱用
この二つは結婚を破壊するのみならず、中毒者の命を奪います。調査によれば、全アメリカとカナダの40%の家族の中には、アルコール依存症患者がいます。

 12. ポルノ、ギャンブル、その他の中毒
人間の性質は悪であることは、説明するまでもないでしょう。特に若いときは、破壊的な行動にはまってしまう傾きがあります。

最初は、「ポルノやギャンブルや危険な薬物をもてあそんでも、怪我はしない」と思い込んでいます。確かに、それほど影響を受けない人もいます。しかし、自分の弱さが分かった時には手遅れという人もいるのです。中毒は、家族の基本的な枠組みを危うくします。

これは、馬鹿げた、またとりすました警告に聞こえるかもしれません。しかし、人生を台なしにした人々を私は20年追跡調査しました。最初は試しにやってみるつもりの人が、ついには死んでしまったケース、または結婚生活の破滅に至ったケースもあるのです。

以上が高い離婚率の原因ですが、実際はこのリストは無限に続きます。雑草は、歩道のほんのわずかなすき間を見つけて生えてきます。不利な条件をはねのけ、夫婦が親密で長続きする結婚生活を楽しみたいなら、真剣に取組むことが必要です。黙っていれば、二人の心は近づくよりもますます離れてしまうものなのです。

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Q.452

平和な家庭を脅かす一番の敵は何だと思われますか?


A.

それは結婚カウンセラーならばだれでも日常的に扱わねばならない問題です。典型的なパターンは、情緒的な必要を夫に全て満たしてほしいと願う弱い妻と、家庭のためにほとんど時間をとらない仕事中毒の夫です。

来る日も来る日も彼女は夫に期待しつづけますが、いつも裏切られます。ガミガミと不平を言い夫を責めますが、効果はありません。夫は三人分もの仕事を抱えており、それを全部進めながらどうやって妻の必要に答えてやったらいいのか分かりません。時がたつにつれ、妻はますますいらだち、それで夫はますます仕事に逃げ込みます。職場では夫は尊敬され、成功しています。それ以後、夫はますます妻の求めに応じなくなります。

ある日とうとう妻の堪忍袋の緒が切れ離婚を申し立てるか、他の男の元へ去り夫を驚かせます。彼女はその決断を後には後悔し、子どもは悲惨な目にあうでしょう。しかし、結婚生活はとっくに破たんしていたのです。

予防法はいくらもあります。しかし、これからも数え切れないほどの家族がこのようなシナリオを演じることになるでしょう。

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Q.454

男はゴールを目指して犠牲を払うものだと私は考えてきました。しかし博士は仕事に向ける情熱を冷まして、夢の実現を先延ばしにするようにとおっしゃるのでしょうか? そういう話は初耳です。


A.

情熱や夢を持つことには問題もありません。ただ、人生の他の大切な要素とのバランスを保つべきです。あなたの家族や神との関係がその最たるものでしょう。

人生のさまざまな要素を視野に入れるべきことを例を使って説明しましょう。

「ロスアンゼルス・タイムズ」誌の記事で、バフィントンという人のことを読みました。彼の人生の目的は、自分の庭で記録破りのサイズのレモンを栽培することでした。そして、そのための作戦を考え出したのです。暖炉から取った灰と、ウサギと山羊のこやしと、錆びたくぎ、そしてたっぷりの水を木の根元に注ぎました。その春には、やせた小さな木に一個2キロ弱もありそうなレモンが二個なったのです。しかし、同じ木の他のレモンはみなしなびて不格好でした。バフィントン氏は、何が悪かったのかを研究中だそうです。

人生も似たようなものだと思いませんか? 一つのことに多くの投資をすることが、他の部分の可能性を奪うことになりがちです。私なら、記録破りの奇形のレモン二つよりは、おいしいレモンが鈴なりの木をとります。あなたはどうでしょう。必要なのはバランスです。それは人生と、また親業との鍵でもあります。

ひきも切らない仕事に追われる夫婦は、疲れ切ってしまい、散歩をしたり本当の気持ちを分かち合ったり、互いの必要を理解しあい満たしあう余裕がないのです。数え切れない家庭が、今日も息もつけないようなペースで動いており、家族はみな疲れきりイライラしています。

夫は残業で深夜に帰宅し、妻は自分の仕事に追われています。子どもたちはほったらかしで、日常生活は目のくらむような早さで過ぎていきます。ある家庭では、おじいちゃんおばあちゃんさえ忙しすぎて、孫のめんどうが見られません。このような多忙さが、家庭の崩壊に至ることは明らかです。何とかペースを落とすべきです。

最近、私の何人かの友人は、わざわざ安くて手狭な家に移って住宅費を浮かし、仕事時間を減らしました。そのような節約の仕方はあまり聞きません。現代人に似つかわしくないかもしれません。しかし、晩年に近づき、自分にとって大事だったことを思い巡らすとき、家族との思い出こそ上位になるのです。

もし老後の自分にとって友人や家族が宝だとしたら、今からそのように過ごすべきではないでしょうか? これは私のアドバイスの中で最善で、同時に最も実行困難なものかもしれません。
あなたの夢や情熱は大切にしてください。成功を目指して懸命に働くのです。しかし、2キロのレモン二つを栽培するために、他のレモンすべてを犠牲にするような愚は避けていただきたいのです。

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Q.455

最近、子どもと過ごす時間があまりとれないのですが、いっしょにいられる時は大事にしたいと思っています。「子どもと過ごす時間の質が長さよりも大事だ」という意見に先生は同意なさいますか


A.

私には、その論法が誤りだと思うのです。なぜ、時間の質と長さのどちらかを選ばなければいけないのでしょうか。私たちの生活のほかの場面で、そういう選択を迫られることはありません。どうして、子どもと過ごす時間についてのみ、そのように考えるのでしょう。

たとえばの話です。あなたが、町でも有数のレストランで食事をするのを楽しみにしていたとします。ウェイターが持ってきたメニューを見て、あなたは一番高級なステーキを注文しました。ところが、出てきたのはお皿の真ん中に三センチ四方の小さなお肉が乗っているだけです。

あなたが苦情を言うと、ウェイターは答えます。
「確かに小さいことは小さいですが、最高品質のビーフでございますよ。これ以上の味はどこでもお目にかかれないと思います。なにしろ、大事なのは量ではなく質でございますから」

当然ながらあなたは憤慨します。なぜなら、食事をはじめ、多くのものは質量ともに大事だからです。子どもと過ごす時間についても、同じです。子どもたちは、親と過ごす時間が必要であり、私たちは最善のものを彼らに与えるべきです。私には、「量か質か」という議論が、子どもにそのどちらも与えない言い訳に使われているような気がしてならないのです。

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Q.456

先生は、結婚生活を破壊するものの一つとしてアルコール依存症をあげられましたが、実は私の夫にも同じ問題があります。これが大きな悩みの種になっていて、特に子どもたちに精神的な問題が出て来ないか心配です。アルコール依存症は直る病気ですか。私どもの家族にも、希望はあるでしょうか


A.

アルコール依存症は、本人だけではなく家族全体にとっても影響の大きな病気です。調査によると、西欧諸国に住む人々の40%は、近親者の中にアルコール依存患者を持っています。発病率は、ロシアと東欧諸国ではさらに高くなります。この問題が子どもたち、伴侶、また社会一般に与える影響は推し計ることができません。幸い、助けを求める気持ちがあれば治療は十分に可能です。

「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」ラジオ番組で私は、この病気に造詣の深い方々を招いて話し合ったことがあります。その中には、20年間この病気を治療してきたキース・シンプスン医師、また25年のカウンセリング経験のある結婚家族セラピストのジェリー・バトラー氏がいました。バトラー氏は、父上を酩酊中の自殺によって失った方でした。他には、回復中のアルコール依存症患者の「ボブさん」と奥さんの「ポーリーンさん」でした。この御夫婦は仮名で参加なさいました。

私は、この4名の方々に「アルコール依存症とは何かをくわしく説明して下さい」とは頼みませんでした。リスナーの方々は、この問題の深刻さをすでに御存じだったからです。むしろ私は、家族がこの病気をどのようにしたら発見できるか、またどうしたら愛する者の助けになれるのか、という具体的な提案を求めました。いただいた答えは大きな励ましであり、また目を開かれるようなものでした。

シンプスン先生には、「どうしたらアルコール依存症は治療できるのか、希望はないのか、患者とその家族には救いがあるのか」を聞きました。先生の答えは以下の通りです。

「私は長年のこと内科を専門にしてきましたが、気の滅入る仕事でした。慢性の肺疾患や重傷の糖尿病や心臓病の患者さんをお助けすることはできましたが、実際のところ、私の努力はただ病気の進行を遅らせるだけのことでした。時間がたてば、状況は悪化し、病気は進行したのです。
毎日ICUを回診しましたが、人々が亡くなるのを見なければなりませんでした。しかし、アルコール依存の患者さんは回復していったのです。

そういうわけで、私は今は、ほとんどアルコール依存の患者さんだけを診察していますが、大変やりがいのある仕事だと思っています。想像以上にひどい状態の患者さんを診ますが、彼らが回復のプログラムに入ると、数カ月でその変化は別人かと見違えるほどの回復ぶりです。

そういうわけで、アルコール依存は治療可能であるばかりか、様々な慢性的な病気の中でも一番回復の望みの大きい病気です。アルコール依存患者が回復すると、病気になる前よりもかえってよく機能し、有能な人間になっているのです」

「アルコール依存患者には望みがある」というのが、あの番組のテーマでした。しかし、回復が始まる前に、問題を認め、治療を求めねばなりません。それがあなたの家族に適用できる点だと思います。ご主人にその願いがあるなら、いくらでも治療が可能なのです。

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Q.457

夫は大酒飲みですが、それほど酔いません。いくら飲んでも泥酔することがないのは驚くほどです。ということは、彼はアルコール依存症患者ではないと考えていいのでしょうか。


A.

残念ながら、お話の内容は隠しようのないアルコール依存症の特徴です。この病気の治療を専門としているお医者さんの話に戻りましょう。私が、「家族が気をつけるべき初期の症状は何でしょうか」と聞きますと、シンプスン先生はこう答えました。

「最初の赤信号は、アルコールに対する『耐性』です。同じように酔うためには、もっと呑まねばならないことを発見するのです。これを『酒に強くなる』と言い、酒呑みの世界ではほめことばです。実際には、これは体内の化学的な調整が出来たことを示す、危険なシグナルなのです。

次に、「飲酒についてもう語りたくない」という地点に来ます。自分が普通の人よりも多くのアルコールを摂取していることを知っていて、それについていっさい触れようとしません。これが、否認の始まりで、それ以後何年も続く可能性があります。

三番目に、「ブラックアウト」を経験し始めます。これは短時間の健忘症のことで、次第に思い出せない時間が長くなります。何が起きているかと言えば、脳の中の記憶をつかさどる細胞が、本人の言ったことやったことを覚えていないのです。

またこれは、『低量現象』です。一、二杯呑んだだけで起こるのです。大量のアルコールを呑んだための麻酔効果からくる泥酔のプロセスを言っているのではありません。昨晩のことを思い起こそうとしても、『二杯目のあと、何がどうなったのか全く思い出せない』ということがあるのです。恐ろしい経験です。

四番目に、いったん飲み始めたら、自分がどのくらい飲むか予測ができないことに気づき始めます。私に言わせれば、これが、アルコール依存症の鍵となる特徴であり、この病気の定義と言えます。自分で止めようとしても止められず、決めた以上の酒量を常に飲んでしまうのです。「ちょっとビールを一杯」と思って腰をおろしますが、目を覚ますと翌日の午後になっているのです。
普通の人々には信じられないかも知れませんが、アルコール依存症患者は、酔おうと思って飲むのではありません。『ほんの一、二杯だけ』と思うのです。『もう二度と酔っぱらうようなまねはしない』と誓う依存症患者は、本気でそう言っているのです。その約束を破る誘因があるわけではありません。しかしながら、友人と座って『まあ一杯』と始まったが最後、気づいたら翌朝になっているのです」

患者のボブとその妻のポーリーンが語ってくれた、悪夢のような経験を聞いて下さい。
まず、ポーリーンです。

「夫が何度『二度と呑まない』と約束したことか、数えられないほどです。それが一番私のフラストレーションになっていたんだと思います。夫は、私の顔を見て『もう今度こそ、酒はやめた』と言うんです。

『お前にも子どもにも迷惑をかけた。もうコリゴリ。金輪際、酒には手を出さないと約束する』
それでも一日二日すると、ぐでんぐでんに酔っぱらっているんです。嘘を言っていたんだと思いました。愛していると言いながら、どうして何度も何度も嘘がつけたんでしょう。

実は、嘘をついていたんではなく約束が守れなかったんです。主人は、意志の力で問題を片づけられると思い込んでいました。決心して下痢を止めようとするようなものです」

何度も失敗を繰り返していた時に、何を感じていたのかボブに話してもらいました。彼は、悪習慣を克服できない自分の弱さを分かっていなかったんだ、と言いました。

「私は、問題はウォッカだと思いました。それで、スコッチに切り替えました。それからブルボンにしました。黙想もしてみました。どれもだめでした。

飲み癖をコントロールしようといろんな方法を試しましたが、やっぱりもとの木阿弥なのです。それで、今度は隠れて飲むようになりました。ポケットにウィスキーの小ビンを入れていて、いつも飲んでいました。家内に隠れて半年続けました。

土曜日の朝、家内はいつも髪を洗って、大きな音のするドライヤーを30分かけます。家内が髪を乾かす時間が来るのが待ちきれませんでした。戸棚に、ウォッカが5分の1残っていたからです。走って行って冷蔵庫からソフトドリンクの缶を出して、半分流しに捨てあいたところにウォッカを注ぎました。

それから、何ごともなかったかのようにテレビの前に座って飲んだんです。飲酒の問題を家族に隠すには、よくよく計算しなければなりません。こんなことが何ヶ月も続きました。私は、薬物中毒になっていながら、全く気づいていなかったんです」

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「ドクタードブソンの一問一答」の翻訳については、ファミリー・フォーラム・ジャパンがティンデール社から許可を得ています。

Excerpted from COMPLETE MARRIAGE AND FAMILY HOME REFERENCE GUIDE ・ 2000
by James Dobson Inc. Used and translated with permission of Tyndale House Publishers.
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