計算している子もいれば、いない子もいます。今話題にしているのは、誰からも命令をされたくない、我の強すぎる子です。そういう子は、自分の目的を果たすためには、用意周到な作戦を練ります。小さいころ、そういう策略の得意な友人がいました。彼は、軍隊の将軍さながらに敵の暗号を解き、その鼻をあかすことができたのです。彼は、親のしようとすることをすべて読んでいました。
ある晩、彼の家に泊まりましたが、ベッドに入ってから、父親のかんしゃくについて彼は驚くべき説明をしてみせました。それは、こうです。
「うちのパパが、怒るとね、びっくりするような、ひどい言葉を使うよ」
そして、父親が使うであろうひどいことばの例を、三つ四つ出しました。私は「まさか!」と思いました。
父親のウォーカーさんは上背があり、自制心があり控えめな人でした。息子のアールが言うようなことばを口に出すような人とは、とても考えられません。アールが、いたずらっぽく言いました。
「嘘かどうか、みせてあげようか。このまま眠らないで、しゃべったり笑ったりし続けてごらん。パパがやって来て、静かにするように何度も言うよ。来るたびに、どんどん腹を立てていって、それからさっきぼくが言ったようなすごいことばが出て来るから、まあ見ててみな」
私は半信半疑でしたが、人格者のウォーカーさんがひどい言葉を使うのは、一度聞いてみたかったのです。それで、アールと私がおしゃべりを止めないでいると、あわれなウォーカーさんは、私たちに注意をするために一時間以上も廊下を行ったり来たりしたのです。
アールの予言通り、お父さんは私たちの寝室に来る度に、その声は高く大きくなっていきました。だんだん心配になってきて、「もうやめようよ」と言いたかったのですが、アールは慣れたものでした。「さあ、そろそろだぞ」と言い続けるのです。
ついに、12時過ぎになって、ウォーカーさんの堪忍袋の緒が切れました。私たちの部屋の方へやってくる足音で、家中が震えました。ドアをけり破るような勢いで入って来て、ベッドの上の息子に殴りかかりましたが、彼は毛布を3、4枚かぶっていたので、ことなきをえました。それから、私がそれまで聞いたことのない種類のことばがウォーカーさんの口からとび出しました。私はショックでしたが、アールにしてみれば、してやったりでした。
お父さんが毛布にくるまったアールを殴りつけ、冒涜的な言葉を浴びせ続けている間も、アールは毛布の下から大声でこう言いました。
「聞いた? ね、言った通りだろ。嘘じゃないだろ?」
その晩、アールが父親に殴り殺されなかったのは、不思議です。
私は暗闇の中で、そのことを考えながら、「自分が大人になったら、子どもから絶対にこういうふうに操られないようにしよう」と決心しました。子どもたちが親を尊敬するようになるには、きちんとしつけることがどれほど大切かが分かるでしょう。
子どもという小悪魔が父母を怒りとフラストレーションの固まりに変えてしまう時、親子間にある大事なものが失われてしまいます。子どもは、年長者への軽蔑の心を育み、それは荒れ狂う思春期の時期に必ず爆発します。人間の性質のこの単純な真理をすべての人が理解できたらと、切に願います。
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