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ドブソン博士の一問一答
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Q.296 |
うまくいっています。主人の前では私といるときとは違います。先生は何を言いたいのですか。 |
A.
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ご家庭での問題解決の鍵を握るのは、お父さんかもしれません。このような時に父親は調停役として重要な役割を果たします。母親が怒りを吐き出し、適当な時に妥協案を見つけるのを父親は助けてくれます。娘さんも、お父さんには耳を傾けるかもしれません。十代の子が1人の親にイラ立つときにも、別の親には近づくものです。戦争中の国が同盟国を探すようなものです。
もしお父さんがそういう方向に動いてくれるなら、家庭内の荒波を静め女性同士がいがみ合わなくてすむようになるでしょう。男性のこの影響力をうまく生かせないなら、日常の小ぜりあいがさらに悪化することもあるでしょう。
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Q.297 |
先生は、「親は、まちがったら子どもにあやまり、いつも子どもの側に立ってやりなさい」と教えられますが、息子は今大変な反抗の最中で、先生の言われる通りにするのは困難です。麻薬をやり、学校をサボり、家ではよく爆発します。十代の子に対しては、もの分かりの良い顔をせず、時に厳しくするべきこともあるのではないでしょうか。 |
A.
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もちろんです。あやまり、融通し、妥協し、交渉をするのがふさわしい時はありますが、意を決して「いい加減にしなさい」と言うべき時もあります。家族に暴力を奮う子は、「赦そう、忘れよう」としてくれる親の愛を、「軟弱」と解釈するものです。乱暴を静めるのに、なだめても駄目です。ますます怒りを高じさせ、無礼になるのみです。
行動科学の研究はこのことを実証しました。メリーランド大学医学部のハービン教授とマッデン教授は十代による親への暴力に関する研究をしました。それによると、親への暴力は普通「片親もしくは両親が責任を放棄し」、家庭に主人がいなくなってしまった場合に起こります。暴力を奮う子どもが、いわば一家の長になってしまったのです。反抗的でひねくれた十代は、力を崇め弱さを軽蔑します。ことに愛から出てくる弱さを軽んじます。
もう一つの発見は、「親が事態の深刻さを認めていないこと」が家庭内暴力のケースにほぼ共通している点でした。命にさえ危険が及んでいるのに警察も呼ばず、嘘をついても子どもを守り、子どもの言いなりになり続ける。親の権威は失墜していたのです。
ある父親は、怒った息子に階段から突き落とされてあやうく死にかけました。それでも父は、息子は悪くないと言ったのです。ある婦人は息子にナイフで刺され、もう数センチで心臓をやられるところでした。それでも息子と同じ屋根の下に住み続けたのです。
ハービン教授とマッデン教授は言います。
「甘やかしと放任が、若者の暴力に関係している。両親は確固とした指導をするべきだ。家庭には責任者がいなければならない」
私はこの2人の精神科医に賛同します。レーガン大統領の任命で「少年法および非行防止のための国家諮問委員会」で奉仕した関係で、私は若年層の暴力のパターンを知ることになりました。たった13歳の冷血な殺人犯を何人も見ました。その家庭では、親の指導が弱いか全くないことが多かったのです。そういう家庭は、幼くて、たちの悪い犯罪者の温床です。
家庭内暴力の危険がある時は、よくよく考えた上で断固とした行動に移るべきです。手をこまねいていたら、取り替えしのつかないことになります。
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Q.298 |
先日新聞で、14歳の男子が何の理由もなく女性の顔に銃を発砲したという記事を読みました。私の子どもの頃は、先生に対して暴行などはおろか口応えさえしませんでした。今日の若者の暴力は経験したことのないものです。いったいどうなってしまったのでしょう。 |
A.
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おっしゃる通り、現在の若年層の暴力はさらに悪化すると言われています。常習犯だった人々の集会で最近聞いたことですが、彼らが見ても「今の子どもたちには良心というものがないようでこわい」と言うのです。殺人を犯しても、後悔の念を見せないのです。
数年前シアトルでのことですが、12歳と13歳の2人の少年がコンビニから出てきた人を殴り殺すという事件がありました。バットでだれかを殴りたいという以外、彼らには何の動機もありませんでした。
バージニアでは、14歳の子が近くにいた車の運転手の顔に向けてピストルを6回も打ちました。理由は、「オレのことをにらんだから」だけでした。
1995年のことですが、家族の乗った車がロスアンゼルスの路上で左折禁止の標識をうっかり見落としました。銃弾が雨あられとふってきて1人の少女が死亡しました。暴力団が、面白がって銃を車に向けて打ったからです。
最後に、2階の窓から突き落とされて死んだ5歳のシカゴの男の子を忘れられません。犯人は10歳と11歳だったのです。思春期以下の子どもたちの間では、この種の「目的なき殺人」が歴史上例を見ないほど多くなっています。
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Q.299 |
それはなぜでしょう。なぜ若者たちがこんなに暴力を奮うようになったのでしょう。 |
A.
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実は、その調査には何億ドルという予算が使われました。結果は驚くべきものです。
麻薬禍による影響は別にしても、子どもが見るテレビや映画に加え、暴力の傾向は子ども自身が経験した放任と虐待の副産物なのです。それは都市部で育った子どもたちに顕著です。
麻薬中毒やアルコール中毒の親に生まれた子どもの多くは、想像を越えた悲惨を味わっています。汚れたおむつを何日も替えてもらえず、お尻や足が化膿したままに放っておかれた子。繰り返しぶたれたり、やけどをさせられたり、食事を与えられなかった子。こわい時にそばにいてだき抱えてもらえなかった子。
多くの子は小さい時、ある者は幼時期に性的ないたずらをされました。かろうじて生き延びた子らは、保護者なしに路上で育ったのです。夜は、車同士の打ち合いの流れ弾から逃げるために放置されたバスタブの中で寝たのです。大げさなとお考えなら、大都市のスラムで働くソーシャルワーカーや警察官に聞いてみてください。
幼い時から極度の苦痛、恐怖そして貧困を味わわされた人間はどうなるか。完全な解答は未だ明らかではありませんが、分かったこともあります。
生まれて最初の1年ないし2年目に以上のような精神的外傷を負った子どもは、高レベルのストレスホルモン、すなわちコルチゾールまたアドレナリンを分泌します。これらの化学物質は、目前の危機に対処するために、肉体を「危機反応状態」にします。小さな子どもの頭脳は、ストレス関係のホルモンをみな吸収してしまいます。その年齢の子にあってはならない種類のホルモンが、神経系統を激しく襲います。その結果、子どもの思考体系と情緒の発達が障害を受けるのです。具体的には、頭脳のいくつかの部分の操作メカニズムが働かなくなります。
私の言いたいのは、今日の虐待された子どもたちが良心の痛みなしに殺人や破壊ができるのは、文字どおり脳障害なのだということです。彼らは普通の感情を持っていません。よるべのない犠牲者に感情移入することができません。なぜならあわれみの感情は認識系統から出てくるもので、その系統がもはや機能しないからです。その時点で、彼らは銃を撃つか、刺すか、いじめに走るのは時間の問題です。
もちろん、私は暴力の弁解をしているのでありません。社会はそれを許しません。しかしこれは、来る日も来る日も繰り返される都市部での暴力の一つの説明です。
結論として、家庭崩壊と幼児虐待は高いつけとなって返って来たということです。もっとも弱い者たちを守ろうとしない社会は、犠牲者たちが復讐できる年齢に達した時に手痛いしっぺ返しを受けます。
ですから、都市部のある場所を通過する時には、車のドアをロックし、人と目を合わせないのが賢明です。目が合っただけで発砲しかねない子どもたちがいるからです。
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Q.300 |
博士は十代をスパンクすることは反対だとおっしゃいました。では、わざと人の邪魔をするような私の13歳の息子に言うことをきかせるにはどうしたらいいのでしょう。洋服は脱ぎ捨てるし、家の用事は手伝わないし、弟には絶えず手を出します。スパンクしないとしたら、どのように彼の注意を引けますか。 |
A.
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もし彼のゆるんだネジを巻き直し、規則通りに動かせるとしたら、それは「刺激と抑制」という原則を適用することでしょう。以下の3ステップは、その作戦を始めるのに役立つかも知れません。
1. 息子さんにとって何が動機づけになるかを判断します。
おこづかいも、動気付けを与える簡単な刺激の一つです。今どきの十代は、現金を喜びます。女の子をデートに誘えば、数千円かそれ以上かかるでしょう。もう一つの刺激は、通常のお小遣いでは手の届かない服などです。そのようなぜいたくを味わわせることは、ぐずり、叫び、懇願し、不平を言い、弟にいやがらせをするがままにしておくよりはるかにいいでしょう。たとえば、「欲しければ、……を買ってあげてももいいのよ。その代わり……」と条件を出します。一旦同意が得られたら、次のステップに進めます。
2. 約束を形にします。「契約書」は、共通の目的を決めるのには優れた方法です。親子で同意しあったことを書き記したら、2人でサインします。「ある時間内に何かをし終えたら何点」というような決まりを決めてもよいでしょう。点数の決め方で一致できなかったら、第三者に決めてもらうこともできます。
たとえば、息子さんはiPodがほしいのですが、誕生日は10カ月後で、今は文無しだとします。iPodは約2万円します。息子が向こう6週間から10週間のうちに色々な仕事をして1万点を稼いだら望みをかなえてあげると、父親は約束します。仕事と点数の決まりはあらかじめ定めておき、あとから付け足して行くこともできます。例をあげればこのようにします。
a. 起きたら部屋のかたづけをする ---------------------- 50点
b. 一時間勉強する ---------------------- 150点
c. 部屋掃除または庭掃除一時間 ---------------------- 300点
d. 朝飯、夕飯の時刻に間に合うよう席につく ---------------------- 40点
e. 一時間けんかしないで弟、妹の世話をする ---------------------- 150点
f. 洗車する ---------------------- 250点
g. 日曜日に8時までに起きる ---------------------- 100点
この決まりは誰にも有効ですが、具体的にどう応用するかは自由です。想像力を働かせれば、お宅に合う仕事リストと点数表を作れます。手伝いをすれば点数が増え、しなければもらえないというのが大切なポイントです。許せない言動にはマイナス50点あるいはそれ以上の罰をもうけます。(ただし罰は公平かつまれにすべきです。さもないと、決まりそのものが成り立ちません)特にほめてあげたいような言動には、ボーナス点をあげたらよいでしょう。
3 最後に、その場であげるごほうびも準備します。即座にあげるのが一番効果があり、最終的なゴールに至るまで興味を持続するのに役立ちます。温度計のようなチャートを作り、目盛りには点数を書き込みます。一番上には1万点の目盛りとiPodのイラストを配置します。その日の点数を毎晩計算し、赤く塗った部分が上に伸びます。短い間に着実に伸びたら、何かをボーナスとしてつけます。途中で子どもの気が変わったら、それまでの点数を他の品にふり当てます。例えば、1万円で何か他の物を買いたくなったら、1万点の半分の5000点までたまった時点で望みのものを与えます。ただし、お子さんがまだ稼いでいないものをあげてしまわないように。反対に、得るべきものを拒んだり先延ばしにしたらいけません。
この決まりに一字一句こだわる必要はありません。本人の年や成熟度にあわせればいいでしょう。同じやり方でも、乗ってくる子とこない子がいます。想像力を働かせお子さんと考えてみてください。どの家でもうまく行くとは限りませんが、乗って来る子もいます。成功を祈ります。
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Q.301 |
14歳になる娘が、最近私たちのところに来て「妊娠しちゃった」と言うのです。あんなに驚いたことはありません。どういう態度で接したらいいのでしょう。 |
A.
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ある人が「少十代の娘の妊娠は、親が直面する難問のうちでも特大のものです。最初に耳にするとき、自らに恥と苦痛とを招いた娘さんに「恥ずかしいことをしでかして」と言いたくなるのは、もっともです。
しかし、深呼吸をした後で、もう少し理性的で愛情のこもった反応をしましょう。済んだことをくよくよしている場合ではありません。お嬢さんは、今こそあなたの愛情と理解とを必要としています。これからの数ヵ月間に彼女はいくつもの重要な決断をせねばならず、ここでお母さんが身を引
いてはなりません。神さまの赦しと導きを得るためにも、あなたの霊的な指導が必要です。
この時期に、あなたが知恵と愛情を注げるなら、危機を一緒に乗り越えた者の絆を娘さんと築くことができるのです。
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Q302 |
16歳の息子がどうも薬物を使っているようです。前とは様子がだいぶ変わり、友だちも変な子ばかりが集まります。薬物使用者の症状のうちでよくあるのは何ですか。どういう点に気をつけたらいいのでしょう。 |
A.
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ご質問に十分に答えようとしたら本を1冊書かねばなりません。出回っている麻薬の数は余りにも多く、それぞれが特有の症状を表すからです。しかし、息子さんについて気をつけるべき8つの身体的また情緒的な症状があります。
1 まぶたと鼻の炎症が起きる。服用する麻薬により、瞳孔が極度に拡大または縮小する。
2 気分が極端になりやすい。怠惰で、陰鬱で、内向的になるか、騒々しく、ヒステリックで、神経過敏である。
3 食欲が偏る。非常に食欲があるか、逆に乏しくなる。体重が減ることもある。
4 性格が急変する。怒りっぽく注意散漫で混乱するか、攻撃的で疑り深く激情的になる。
5 よく体臭や口臭がする。不潔さを気に留めなくなる。
6 消化器官が損なわれる。下痢、吐き気、嘔吐が起きやすい。頭痛がし、物が二重に見えることもある。顔色や姿勢の変化など、その他の体調の変化もある。
7 腕に注射針の痕があることは重要な兆候である。傷は時に感染してただれたり、腫れたりする。
8 道徳価値観が崩れやすく、新しく風変わりな考えや価値観がとって代わる。
注意すべきなのは、ある若者は人目を隠れて麻薬使用を続けることです。お近くの警察で麻薬担当官に会うことが必要かもしれません。息子さんのケースに当てはまるより具体的なアドバイスが得られるでしょう。
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Q.303 |
息子の部屋をそっとのぞいて何をしているのか確かめるのはどうでしょう。親はそんなことをしたらいけないでしょうか。 |
A.
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十代のプライバシーを冒してでも、両親が秘密に調査をしなければならないときは確かにあります。あるコメディアンが十代の娘が麻薬を使っていることを発見したとき、メディアで広く討論がなされました。問題がついに表面化したとき、母親は事実をつきとめる努力を怠ったことを後悔していると述べました。彼女は多くのトークショーに出演し、「ああいうケースの子どもたちは親に見つかるべきだ」と語りました。プライバシーもさることながら、目の前で進行している犯罪行為を目をつむって見ようとしないことの方が問題です。息子さんのしていることを確認してください。
もちろん、親は自分の子どものことをよく把握しておくべきです。違法なことや害になることなどまったく興味がないという青年もいます。そういう子どもの部屋や私物まで調べるようにとは勧めませんが、物陰に隠れては怪しげなことをし、おかしな友だちを集め、家の中では親を決して部屋に入れないような子の場合は、私なら遅くならないうちに必要な情報を集める努力をするでしょう。
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Q.304 |
私たちは、今の世代の育て方をみごとに間違えた」と先生はおっしゃいますが、それはどういう意味かを説明してください。 |
A.
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それは、前世代が少なくとも今日の程度までには見なくてもすんだ多くの悪影響のことです。安全なセックスという考え、映画・ロック・テレビに見られる暴力やセックスがらみの映像、ギャングや薬物汚染などのことです。それから、西欧世界の子どもたちに多大な影響を与えている、容姿や肉体的魅力を余りにも強調する風潮です。時にはこれが生命の危険に至ることもあります。
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Q.306 |
子どもが巣立つときに母親がうつ的になり「空になった部屋」を受け入れることができないことをよく聞きますが、わが家の場合はむしろ父親で、1ヵ月以上も意気消沈していました。こういうことはまれですか。 |
A.
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いいえ、よくあることです。最近の調査では、大学1年生を持つ189人の親に、息子や娘が家を出たときの気持ちを聞きました。驚いたことに、母親より父親のほうが身にこたえたというのです。
「空っぽの巣」症候群が、映画「花嫁の父」のテーマでした。あの映画は娘を思う父親への、すばらしく心にしみるささげものになっています。父親のジョージは、食卓で娘の婚約のニュースを耳にして驚きます。自分の耳を信じられないのです。目をこする彼の前に、娘の赤ちゃん姿、次に10歳のおてんば娘、そして18歳の美しい娘盛りの姿が次々に現われました。娘はあっと言う間に成長し、もう家を出ようとしているのです。もう自分は娘にとって第一の男性ではなくなったのであり、彼には悲しむ時が必要でした。
なぜ、男性が子どもの巣立ちをこれほどに悲しむのでしょう。主な原因の一つは後悔です。あまりに忙しく働きすぎて、年月は矢のように過ぎてしまいました。そして新しい家庭を築こうとしている娘ともう一度親子関係をやり直すには遅すぎることに気づくのです。
子どもたちがまだ家の中にいるお父さん方に申し上げます。いっしょにいるひと時ひと時を大切にしてください。今の時はまたたく間に過ぎ去って行きますから。
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Excerpted from COMPLETE MARRIAGE AND FAMILY HOME REFERENCE GUIDE ・
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